さざなみのキヲク~宮澤章二先生の詩~

宮澤章二先生の詩をご紹介します

「力を蓄えて」 宮澤章二


力を蓄えて



        宮澤章二



             
世俗の慣用語には いい加減(かげん)なものがある


成績の良い子を〈出来る子〉と呼び


成績の悪い子を〈出来ない子〉と呼ぶが


なにが〈出来る〉で 何が〈出来ない〉のか


素直な態度で 一心に学ぶことの出来る子


それが〈出来る子〉の代表ではないのか


心をこめて学ぶことの出来ない子こそ


本当に〈出来ない子〉といってよいだろう


春の風を待ちかねて野の花が開き始める


どの花も〈どうでもいいや〉などと思わず


咲く力を一心に蓄えるから 咲けるのだ


野の花たちの呼びかける声が 聞こえる


―― 咲く時には 咲くことに命を懸けよう


  必ず 広野(ひろの)の光が助けてくれるよ









宮澤章二(1919~2005)



埼玉県羽生市出身のさいたまを代表する詩人。


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E6%BE%A4%E7%AB%A0%E4%BA%8C


ウィキペディア

「限りなく広く深く」




限りなく広く深く             


       宮澤章二




ぱっちりと両の目をひらくと


限りなく広い世界が 目の前にある


ひっそりと両の目を閉じると


限りなく深い世界が 心の中にある


 私たちは 無限の世界の中心に立ち
 無限のものたちに取り巻かれて
 生き生きと 無限の呼吸をつづける 


庭に遊ぶすずめたちの鳴き声でさえ


限りない命の流れにつらなって交響し


勉強する国語や数学や理科の世界もまた


限りなく広く深く その果ては 遠い


無限の世界のまん中に立つのだから


私たちは どこへでも歩くことが出来る


限りなく歩いてゆくことが出来る








にほんブログ村

「八月の太陽」




埼玉の詩人、宮澤章二先生の未発表の詩です。




戦後日本の詩歌、歌謡文化に貢献されました。




東日本大震災の直後から流れたCMの詩を作った方でもあり、




お馴染み「ジングルベル」の作詞もされています。
(過去記事をご参照ください)



未発表詩は、中学生へ向けた応援詩です。




ご子息の宮澤新樹様より頂きました。






八月の太陽


 




空をはげしく飛ぶ鳥たちは


つばさに 飛ぶ運命を になったから


くちばしを鋭くして 壮快に飛ぶ


地に強く生きる ぼくらは


全身に 生きる運命を になったから


疲れを自ら克服しながら 生きる


親鳥は 飛び立つ若い鳥に 必ず言う


「風をおそれてはいけないよ


 風を見くびってもいけないよ・・・・・」


ぼくらもまた 世界の今日と明日を



おそれず 見くびらず 進んでいこう


八月の太陽は むなしく燃えるのではない


燃え続ける運命をになった球体だから


生き生きと 無になるまで 燃えるのだ





詩人・宮澤章二先生



埼玉県羽生市出身。
東京府立高等学校、東京大学文学部美学科卒業。


埼玉県立不動岡高等学校の教諭時代に、疎開で加須市に住んでいた作曲家の
下総皖一と出会ったことから、詩人・作詞家として活動を開始。
校歌や合唱曲、童謡などの作詞を多数手がけた。
特に校歌は埼玉県内を中心に300校以上にのぼる。
『ジングルベル』の訳詞者としても知られる。



日本童謡賞、赤い鳥文学賞特別賞、埼玉県文化賞、埼玉県文化功労賞知事表彰などを受賞。
大宮市教育委員長も務めた。
詩『行為の意味』の一節、「思いは見えないけれど、思いやりは見える」が、
ACジャパンの2010年度キャンペーンCMに使用された。





にほんブログ村