宮澤章二 ②昭和40年機関誌「首都高速」より「郷愁について」
こんばんは。
先日の首都高速道路公団の機関誌から「道のファンタジー」の2作目です。
宮澤章二先生は、東日本大震災の直後からテレビで流れた
ACジャパンのCMの詩「行為の意味」が大変有名です。
本質を見抜く鋭い観察眼と真実を突く簡潔でわかりやすい言葉は
胸を打ちます。先生はまさに古き良き日本人だと思います。
道のファンタジー③
「郷愁について」
僕らの青春をいろどった道は
この舗装路の どこにある?
たった一軒の狭いコーヒー店
ひげづらのおやじがコーヒーいれて
勘定は月末でいいよ といい
家のうしろは すぐ 麦畑・・・・・・・
現代の騒音喫茶店をのぞくと
ステレオ・ジャズの充満に沈み
若者の憂愁は いまもまた黒いが___
青春が雲雀と交差し得た道は
この繫華路の どこにある?
しろいものの混じるぼくの髪を
そのとき ガソリンくさい風がなでた
<むかしを 叫ぶな
おまえが去った道で 郷愁を語るな>
(昭和40年発行 「首都高速」機関誌の巻頭の詩より)
・・・こちらもまた、繁栄への問いかけ。
先生は大正に生まれ平成17年までご存命だったので
米肥料商の裕福な家から貧しい農民の窮状を見、
両親が早くに亡くなられた少年時代、戦争を経て
東北新幹線の玄関口となり、さいたま市になった「大宮」の
大都会への変貌をつぶさにご覧になってきました。
自然を愛した先生は、繁栄を喜びながらも
想うところがあったのでしょうね。
現代を生きる我々も、このような戒めを心しないといけないなと
思います。
宮澤章二先生
埼玉県羽生市出身。
東京府立高等学校、東京大学文学部美学科卒業。
埼玉県立不動岡高等学校の教諭時代に、疎開で加須市に住んでいた作曲家の
下総皖一と出会ったことから、詩人・作詞家として活動を開始。
主な著作は「蓮華」「空存」「枯野」「風魂歌」等多数。
校歌や合唱曲、童謡などの作詞を多数手がけた。
特に校歌は埼玉県内を中心に300校以上にのぼる。
クリスマスソング『ジングルベル』の訳詞者としても知られる。
日本童謡賞、赤い鳥文学賞特別賞、埼玉県文化賞、埼玉県文化功労賞知事表彰などを受賞。
大宮市教育委員長も務めた。
詩『行為の意味』の一節、「思いは見えないけれど、思いやりは見える」が、
ACジャパンの2010年度キャンペーンCMに使用された。
平成17年3月11日逝去。
*いつもありがとうございますo(_ _*)o